Jupyter Notebookで特許分析(6)

さて、前回の続きですが、Jupyter Notebookの使い方ではなく、今回の元データ「マッサージ機」に関して考えていきましょう。

少し適当な設定ですが、「マッサージ機の新商品開発を目指しているとある中小企業の知財あるいは技術戦略企画部門の一担当者として、特許を含めたマッサージ機の動向調査とその情報に基づいてマッサージ機市場への参入シナリオ案を提示する必要がある」位のおおざっぱなシチュエーションを設定してみます。

さて、そのような状況にあるとして、既に前回特許データの荒い分析を進めてしまっているわけですが、ここでは改めて特許以外の情報としてマッサージ機の市場の概観を確認してみましょう。

市場の情報は、政府統計資料とか業界団体の統計資料を見ていくのがよいのですが、矢野経済研究所さんの「ボディケア・リフレクソロジー市場に関する調査を実施(2017年)」から市場規模推移のグラフを見てみましょう。

所謂、針灸、指圧、マッサージ、柔道整復等の国家資格を有して行う施術は除くとされていますが、これらの施術以外の「人間の体に触れ、働きかけ、癒しを与えたり、ストレスを軽減するサービス」の市場規模とされており、人々のこのようなケアサービスへのニーズの動向としては適当な資料と考えます。市場規模は急増というほどではありませんが安定して増加しているようです。とりあえず良い情報です。

一方、マッサージ機の市場というのは、このようなサービスニーズの中で、自分が家庭等で日常的に施術を行うために機器を購入する市場ということになり、ほぼ上記のボディケア・リフレクソロジー市場の傾向と相関性があることが想定されます。こちらの方は厚生労働省の薬事工業生産動態統計を参照して家庭用マッサージ器の生産等に基づく市場規模をまとめると下表のようになります。

2012年 2013年 2014年 2015年 2016年
市場規模(億円) 256 279 309 302 275

2014年まで伸びてきた市場規模は2015年以降減少に転じていることが分かります。人々のマッサージに対するニーズは安定して存在する一方で、マッサージ機は必要な人への市場普及が進み飽和状態になってきているということでしょうか。こちらの記事「マッサージ機器売り場、変革の時!」によれば、高額のマッサージチェアタイプの製品に代わり、比較的安価なシートタイプの製品が大ヒットしたとのことであり、数は出ているが売上規模としては減少しているというところですね。(より正確さを期すには上記の薬事工業生産動態統計に生産数のデータもあるのでそれも見たほうが良い。)上手く参入シナリオを立てれば、ある程度の数を売ることは出来そうですが、製品価格に関してはシビアな状況のようです。

これらの点を踏まえて、前回の特許データを見ていきましょう。

調査対象としたFターム4C100は、マッサージチェアやシートタイプや簡易タイプなど、人の体に対してマッサージを行うための様々な機器に関わる特許出願が含まれる分類です。

【出願年別出願件数推移】

出願年別出願件数のグラフでは、出願件数は2006年以降漸減を続けている。新たな技術開発はそれほど活発でないといえる。これまで確認できていないが、この分野に関わる出願人数もおそらく増えてはいないでしょう。

【出願人別出願件数ランキング】

出願人 出願件数
パナソニック株式会社 335
ファミリーイナダ株式会社 212
株式会社フジ医療器 119
日立マクセル株式会社 114
三洋電機株式会社 110
大東電機工業株式会社 104
パナソニック電工株式会社 100
TOTO株式会社 35
株式会社MTG 29
ツインバード工業株式会社 20

それぞれの出願人別出願年別出願件数推移は次のグラフのようになります。

【出願人別出願年別出願件数推移】

パナソニックは2011年まで出願件数が増加し、以降は出願件数を減らし続けています。富士医療機器は2006年と2007年の出願件数が多いが、それ以降の出願件数は2015年の11件以外は一桁代の出願件数となっています。ファミリーイナダは2006年-2008年は30件前後の出願件数でしたが、以後は一旦10件前後に出願件数を減少し、2013年以降に再び出願件数を増加しています。

さて、ここで参考情報として、価格.comからマッサージチェアの最近の市場シェア推定なんかも併せて見てみましょう。

【価格.com トレンドサーチ マッサージチェア市場シェア 2017年9月】

順位 メーカー名 PVシェア率
1 フジ医療器 46.30%
2 パナソニック 29.94%
3 ファミリーイナダ 10.90%
4 スライヴ 8.49%
5 富士メディック 1.25%

マッサージチェアではフジ医療機器が圧倒的な人気を誇り、次いでパナソニック、ファミリーイナダとなっています。これらが特許の出願人の上位にもなっています。スライヴ、富士メディックは出願件数の上位には入っていません。

このことから、パナソニック、ファミリーイナダ、フジ医療機器の特許出願にはマッサージチェアの関連技術の出願が多いことが想定されますが、パナソニックは家電量販店でそれ以外の足用マッサージ機等の商品を見かけることからマッサージチェア以外の出願も多いかもしれません。とはいえ、パナソニック、ファミリーイナダ、フジ医療機器の出願件数と市場シェアを見ると必ずしも出願件数が多いところが市場でも優位に立っているというわけでもないようです。これら3社以外の日立マクセル等の出願人はマッサージチェア以外の比較的小さなマッサージ機の出願が中心でしょうか。

この辺りは、ある程度、出願された技術の中身に踏み込まないとわかりません。とりあえずは、前回作成した出願人別Fターム別の件数表を見てみましょう。

Fタームの中身が表示されていないので、分かりにくいですね、このあたりは改良要です。Fタームと分類定義を紐づけた表をExcel等で作成して、Jupyter Notebookに読み込み、mergeで紐づければ良いと思いますが、その作業の説明やグラフの差し替え等はとりあえず省きます。ここでは、一つ一つの定義を記述します。DA05:対象-胴、DA10:対象ー脚、CA06:設置個所-いすの背部、BB03:駆動源-モータ、BB05:駆動源-ポンプ、DA06:対象-腰、CA03:設置個所-いす、AD02:もみ-流体駆動マット構造、CA01:設置個所-手持ち、BB01:人力になります。

CA01とBB01以外は、いすタイプのマッサージ機との関連性が深いと考えられる分類になります。人力のみに注力している出願人はおらず、手持ちが中心なのはツインバードとMTGになります。ツインバードはモーター駆動の手持ちタイプマッサージ機が中心で、MTGは顔の美容のためのコロコロマッサージが中心になります。大東電機工業と三洋電機は足モミが中心、フジ医療機器、日立マクセルは設置個所いすの分類が少ないため、部分もみが中心、そしてファミリーイナダ、パナソニックは椅子タイプが中心と言えるでしょうか。

椅子タイプはトップ出願人の特許網が厚く、これから参入するのはリスクが高いと考えられます。手持ちや人力タイプを中心に参入方針を考えたほうがよさそうです。(あえて椅子タイプでの隙間を探す方策もないわけではありませんが)

今回はこの辺で次回に続きます。(あるいは記事に後で書き足すかもしれません)

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